”吉野朔実さん逝去…続き”

実は、私の一人息子の名前は吉野朔実さんから取ったんですよ。

字は変えていますが。(吉田秋生さんの「生」を取って、朔生と書きます。)

さっき、ニョーボがLINEで、「息子には言わないでおこう」と言ってきました。


”吉野朔実さん逝去”

なんと、私の敬愛して止まない吉野朔実さんが逝去されていたそうです。

4月20日の事らしい。

吉野朔実さんと言えば、私の過去記事でも紹介したように、華麗な絵と知性に裏打ちされた抽象的なテーマで、私の一番好きなマンガ家さんだったのに!

私と同年齢(学年は一つ上)で、まだ天国に行かれるには早すぎます。ご病気だったらしいですが、何の病気かは明らかにされていません。

しかし、此の間のプリンスさんといい、私とほぼ同年代の方が櫛の歯が欠けるように亡くなっていきます。

寂しい限りです。






少女まんがについて… 清原なつのさん

今日は久しぶりに少女マンガについて書いてみたいと思います。

篠有希子さんの次は、清原なつのさんを取り上げてみたいと思います。

清原なつのさんは、第8回りぼん新人漫画賞で『チゴイネルワイゼン』が佳作入選し、1976年『グッド・バイバイ』でデビューしました。以後、「りぼん」、「ぶ〜け」などに秀作を発表してきました。

清原なつのさんを特徴付ける点は三つ挙げられます。

第一には、彼女は金沢大学薬学部出身のいわゆる「リケジョ」だと言う事です。マンガ家としてデビューしてからも研究職との二足の草鞋を履いていました。作品にもそれは顕れており、然りげ無く化学式が書かれてあったりします。物語の視点も理系らしいクールで分析的な所があります。分析的と言っても、マンガ家さんに多い精神分析学的な視点では無く、もっと物質的な所があります。

第二には、ハインライン、フィリップ・K・ディック、ブラッドベリなどのアメリカSF文学の影響を強く受けている事です。『流水子さんに花束を』とか『アンドロイドは電気毛布の夢を見るか』とか、タイトルにもそれを見て取る事ができます。私はSFには疎いのですが、清原さんの描くSFは少女マンガには無いものがあります。さらに、SFにも理系的なアプローチがされており、『アレックス タイムトラベル』シリーズなどに端的に顕れています。過去に遡って「青いバラ」を栽培するといった発想、「青いバラ」にはアントシアニンが含まれる事、これの色素を抽出して「魔薬」を作ろうとする陰謀、最終的なタイムパラドックスなど、少女マンガには無い発想です。

第三には、少女が大人に成長する、その性的なプロセスに鋭い目を向けている事です。一番の大作『花図鑑』シリーズなどが当てはまります。少女が大人になる、その過程をリアルかつリリカルに描いています。これは、少女マンガのタブーを破っているとも言えます。

第四には、歴史に対する興味が挙げられます。『飛鳥昔語り』、『光の回廊』などの作品が挙げられます。「清原なつの」というペンネームも平安時代の学者の名から取られたそうです。

第五には、基本的に軸足は少女マンガに立ちながら、常にそれを超えようとしている点が挙げられます。初期の秀作『花岡ちゃんの夏休み』シリーズのヒロインはメガネを掛けています。田渕由美子さんのメガネの子は現在の「眼鏡っ子萌え」につながりますが、清原さんのそれは反少女マンガ的な記号です。

これらの要素が一体になって、独特の世界観を持った作品が創造されています。少女マンガでありながらそれを超えようとする、しかし、青年誌風には断じてならない作風は他には見当たりません。今の少女マンガ界では存在し得ないのかもしれません。清原さんの作品群はカテゴライズができません。

ここまでの私に拙い説明では、清原さんの作品がどんなものなのか想像ができないでしょう。幸い、清原さんの作品はかなり系統だってハヤカワ文庫にて文庫化されています。媒体が既に少女マンガではありませんね。

もし、興味をお持ちになった方はご一読お薦めします。


少女まんがについて… 篠有紀子さん

此の所、病気ネタが続いたので気分転換。

篠有紀子さんの名前をご存知ない方も多いかと思います。
然し、私にとってはとても大切な作家さんなのです。
この記事のシリーズは、概ね私の好きな順に取り上げ
ているので、彼女の事を書いてみたいと思います。

彼女は1978年、「アーちゃんの思い人」でLaLa誌上にデビュー
しました。当時のLaLaの新人賞「アテナ賞」の本賞を獲って
デビューしました。

当時から絵のセンスが抜群でテクニックもありました。
そして、青春期のちょっとメインストリームから外れた
清新な心情の表現に優れていました。

恩田陸氏をして「『夜のピクニック』を漫画化するとすれば、
当時の篠有紀子の絵しかないなあと思っていた。」と
言わしめています。

彼女の初期の代表作といえば「アルトの声の少女」でしょう。
ちょっと陰のある孤独で、しかし魅力的な少女・悠有と、
彼女に惹かれるちょっと甘えた少女・麻美を軸に、青春の
切なさを余す事無く描ききっています。

彼女はその後、抜群の絵のセンス(トーンの使い方など名人芸
である)を武器に、SFのテイストを加えたり、サスペンスの
要素を取り入れたり、オカルト的テイストを加えたりして、
一見日常的な世界に寄り添う非日常を表現していきます。
「ストロベリー・エッセイ」、「3年前の眠り姫」、
「閉じられた9月」、「さみしい夜の魚」など
LaLa誌上で確固とした地位を確立します。

そして、1990年前後から他の多くの作家と同じように活躍の場
を女性誌に移して魅力的な作品を多数発表します。
この頃の彼女の絵は美しく、彼女の描く女性は私にはアニマの
象徴のように思えます。(念のため、多部ちゃんとは全然別の
タイプです。)「ラベンダーの庭園」辺りが代表作と言えるでしょう。
この頃のちょっと不思議で美しい作品が私は一番好きです。

彼女の武器として、そのオフビートなギャグセンスも挙げられます。
女性誌に活躍の場を移してからはギャグのセンスも磨かれて
いきました。作品名を列挙する事は避けますが、最大のヒット作は
ギャグ的センスの強い「花きゃべつ ひよこまめ」で、長期連載になりました。

その後も、オカルト的センスを加えた「天使とデート」、
「高天原に神留坐す」など、ペースは落ちているものの新作を
発表されています。現在は目立った活動はなされてないようですが、
時代の趨勢がマンガに求めるものが変わってしまっているので、
私も以前の様にはマンガというメディアをチェックしなく
なりました。何方か、有望な作家さんをご存知ないですか?

少女まんがについて… 吉野朔実さん

マンガシリーズ第2回からは、大好きなマンガ家さんを取り上げようと思います。

先ず、吉野朔実さんについて書いてみようと思います。

彼女の作風は文芸的で、青年期の入り口で遭遇する
自己同一性の喪失を扱った作品が特徴的です。
そして、その表現の為に鏡映的構造を持った
ストーリーが多くなっています。

鏡映は、双子、或いはよく似た2人で表現されます。
其れ故、ストーリー展開は物語力よりも、寧ろ
構造主義的な、スタティックなものになっています。

また、心理学、精神分析、精神医学に題材を求めた作品も多く、
直接に扱わなくても心理学的要素が作品に多く
取り入れられています。

また、筆致が華麗で美しい描写が特徴的です。

彼女は、1980年デビューですが、私が最初に
読んだのは1985年から連載された『少年は荒野をめざす』
です。これは、小説を書いている多感な少女、都と、
都に良く似た(実際、既に他界している都の兄が
投影されている。)陸上少年、陸の物語です。
ここでも鏡映構造が物語を構成する重要な要素となって
います。物語を構成する為の重要なキーパーソン日高は
精神分析家であり、物語も精神分析的です。
また、より後期の作品に見られるような構造主義的な
物語の構成は顕著ではなく、適度に物語力があって
あまりスタティックな作品にはなっていません。

ストーリーの紹介はさて置き、私がマンガで純文学と
同じように感動した唯一の作品です。
それだけに思い入れも大きく、時々読み返します。
都が小説を書いているという事もあって、文学的な
ネーム(しかし、前回紹介した大島弓子さんのように
長くはなく簡潔な)を読むのも楽しいし、絵も
より後期の作品と違ってきちんと閉じた線で描かれ、
丁寧なバックの描写もあって好ましいものです。

彼女の絵は、前期はきちんと閉じたやや硬い線で描かれており、
年数を経るにつれて草書的になって
いきます。そして一貫して美しさ、華麗さを追求したものと
なっています。私はどちらも好きですが、
より前期の絵に惹かれます。

さて、『少年は荒野をめざす』で吉野さんに開眼した私は、
『月下の一群』を読みました。これも文芸的な作品ですが、
構造主義的な所が無く、オーソドックスなストーリー展開になっています。
彼女の作風の変化を知る上で貴重です。

比較的的初期の作品としては、『天使の声』、『眠れる森』
なども好きな作品です。『天使の声』は美しい声のオペラ歌手と声の悪い女の子
というある種の鏡映関係が見られます。『眠れる森』は鏡映構造は顕著では
ありませんが、精神医学への傾倒が顕著になってきます。
これは、『恋愛的瞬間』に繋がっていきます。

さて、『少年は荒野をめざす』以降、『ジュリエットの卵』で双子の近親相姦
という難しい素材で
デリケートな自己同一性の崩壊を描いて見せました。この自己同一性の崩壊という
テーマは『Eccentrics』で頂点に達します。

彼女の作品では、精神分析的、構造主義的な小難しいものばかりではなく、
『いたいけな瞳』、『ぼくだけが知っている』などのように気のおけない
気の利いた読み物もあり、作風に幅を与えています。

これら以降の作品も知的で内面的な世界を表現し続けています。

また、エッセイも多く出してらっしゃいます。彼女は大変な映画通で、
映画に関するエッセイも多く出版されています。

精神科医の春日武彦氏などとも親交が深く、
これが縁で春日氏の著作を読むようになりました。

彼女は私と同年齢ですが、まだまだ活躍して欲しいものです。



プロフィール

marrella

Author:marrella
多部ちゃんと橋本愛さんと音楽と写真が大好きなオヤジです。
徒然にお二人の事や身の回りの事を書いています。
横着者なもので、スローペースでやっていきます。
よろしくお願いします。

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